ママを楽しむ

まずは親が変わろう『子どものチカラを引き出すために』

2017.10.06(fri)

子どもの頃ピアノを習っていた、という方に伺います。
「ピアノの練習、好きでしたか?」

習い事は、通わせているだけで良いものもありますが、家でも練習や宿題をしなくてはいけないものもあります。ピアノはその代表例で、上達するには毎日練習が必要と言われていますし、他にも塾なども毎日の宿題が出されます。家でも自分だけでできれば良いのですが、まだ小さい場合は特に親のサポートが必要。一人でやってうまくいかないときに、「練習が嫌い」という感情が育ってしまい、結果的にチカラが伸ばせないということが起きてしまうため、サポートは大切です。

ただ、このサポートをするときに、日常の忙しさやうまくできないときの親子特有のイライラする感情をどうコントロールするかなど、悩む方も多いのではないかと思います。

親が子どもの「コーチ」になる?

この「練習・宿題サポート」をうまくやるには、「コーチ」のスキルが役に立つのではと考え、そのヒントを探るため、一度「コーチング」というものを受けてみることにしました。コーチングとは、何か目標を達成するために、課題となっていることをコーチとの対話から見つけ出し、改善のための行動をしていくプロセスのことです。今回私は「5歳児にピアノの練習をいかにして“やらせるか”」というテーマを設定しました。

コーチングでは、コーチの質問に答える形で対話をして、課題解決のためのアクションプランを決めます。そして通常はこれを定期的に行いながら、前回決めたアクションプランが実行できたか、できなかったのなら理由は何か、次の行動はなにか、ということを確認していきます。つまり、コーチングは、いわゆるサッカーや野球のコーチのように技術やスキル、メンタルを指導すると言う意味の「コーチ」とは違い、自分の中の課題を整理して解決法を見つける作業なのです。

なぜできていないのか、というシンプルな問いに向きあう

最初コーチからは「お母さんは“どんな状態”にしたいですか?」と聞かれました。私の答えは「子どもが自分から練習をやる、やる気がある状態です」。次に「なぜ今はそれができていないと思いますか」との質問。「楽譜がまだあまり読めなくて教えるのに時間がかかる」「まだ5歳で集中力が持たない」「練習が好きではなさそう」…など、いくつも出てきましたが、そのうちに実は以下のようなことが根っこにあることに気づきました。

・練習中に親がそばを離れるとわからなくなって練習をやめてしまう
・ピアノの練習時間としている朝は、忙しくて集中して教えられない
・週末は練習できないことが多く、月曜に取りかえすのに時間がかかる
・子どもの気分にムラがあり、機嫌が悪いと練習を嫌がる
・反復練習の段階に行く前に次のレッスンがきてしまう

ここまでは、自問自答することで自分でもたどり着けるかもしれません。でも、ここからが“コーチング”。視点を少し変えることで、私はあることに気づきました。

練習は嫌い。でも、ピアノを弾くことは好き

「どういうときに子どもが笑っているか、何が一番うれしそうか」という問いかけに、子どもが気に入った曲がすらすらと弾けるようになったときは、いろんな人に聞かせて、褒められて、本当にうれしそうだということに気づきました。おそらく、練習はあまり楽しんでいないけれど、ピアノを弾くこと自体はとても好きなのです。弾ける状態にさえ持っていければ、おそらく自分から進んでやるのです。

練習に付き合える時間が限られているという環境下で、限られた時間で「ある程度弾ける状態」に持っていくためにどうするかという観点で、私は以下のようなアクションプランを描きました。

・「ピアノの練習」とひとくくりにしていた時間を、「教える時間」と「ひとりで反復練習する時間」に分け、それを本人にも伝える
・新しい曲を始めるときは、弾けるようになるまで集中して教える
・ひととおり弾けるようになってから、朝の時間帯は主に「反復練習」とする
・週末にも練習時間を必ず作り、主に週末を「教える時間」として、ある程度弾ける状態まで持っていく

そして、これを総合して「週末に30分、新しい曲をしっかり教える。平日朝は反復練習の時間とする」というルールを決めました。

「明日からやること」を設定する

最後に、最も大切なステップ、明日からでも“できそうなこと”をコーチと約束します。いくら頭でわかっても、何かを「変える」行動をしなくては意味がないのです。私は以下の二つに絞りました。

(1)平日は(自分が)10分早起きをする。
(2)週末に予定を詰め込みすぎない。週末の練習時間を事前に決めて子どもに伝えておく。

これによって、まず平日の朝は時間に余裕を持って練習をみることができるようになりました。そして、週末にしっかり教えることで平日は反復練習にあてられるので、レッスンまでに定着できるようになりました。もう一つ重要なことは、本人に練習時間を事前に伝えていつもそれを守ることで、気分のムラをコントロールできるようになったのです。

変わる必要があるのは・・・

コーチと話す前は、子どもにどう「やる気にさせるか」「ピアノを好きにさせるか」といった、「子どもを変えること」ばかりを考えていました。子どもが変わるために、どんな方法で励まして、本人の心からやる気にさせるか、そのためのコーチの「心得」を知りたい。しかし気づいたのは、子ども自身は特に変わる必要はなく、変わる必要があったのは親の側だったということ。それも、「心得」ではなく、子どもが気持ち良く練習をする「環境」や「ルール」をつくることだったのです。

やってみるとそんなに難しいことではありませんが、それによって「できない」→「練習が嫌い」という負の流れを断ち切れたように感じます。子どものチカラを引き出したいとき、子どもにばかり求めるのではなく、親ができることを見直してみる。育児でつい忘れがちなその視点を、忘れないでいたいですね。

ーーーーー
この記事は「ケノコト」にも掲載しています。
◼︎ケノコト〜「日常と食のコト」でくらしを楽しくするライフスタイルマガジン〜