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発達障害ってなぁに?シリーズ その3『困った行動をこんな風にみてみよう!家庭編』

2018.04.26(thu)

「発達障害ってなぁに?」の3回目は家庭編。家庭での困った行動に思いを馳せてみます。子どもがお家にいる間は、お母さんにとって一番大変な時間。時間に追われる中で、自分の思い通りに子どもが動いてくれないジレンマは相当なものです。でもちょっと待って… 困っているのはお母さんたちだけではありません。子どもだって困っている。「誰だって発達障害!?」の観点に立って、全てのお母さんに思いを馳せてもらいたいと思います。
 

ほとんどの子どもが「お母さんはやさしい」と答える

「毎日怒ってばかりなんです」「怒鳴り散らしてしまいます」そういうお母さんのお子さんに、お母さんのいないところで「お母さんってこわい?」と聞くと、ほとんどの子が「やさしい」と答えます。「怒ってばかりじゃない?」と聞くと、年齢が低いほど「少し怒るけどそうでもない」と答えます。お母さんは怒ってばかりと言っているのに、子どもは「そうでもない」と答える。このギャップはどこからくるのでしょうか。

それは、お母さんの存在の偉大さに加えて、発達からくるものです。発達が未熟なほど、怒られたことを理解して次の行動につなげることに難しさがあります。「さっき言ったばっかりなのに、またやってる!」は、ここから来ます。叱ったり、注意したりする側の私たちは簡単ですが、それを受け止める子どもたちは発達のプロセスを踏む必要があるのですから、そう簡単なことではありません。
そしてもう一つの理由は、子どもの行動に思いを馳せないアプローチは、ほとんどが伝わっていないということです。まさに、右から左。お母さんは怒ってばかりの自分に自己嫌悪。でも何も伝わっていないし、変わらない… もし、そんな日々なら、少し立ち止まってみましょう。まずは、我が子を知る旅に出るのです!

「ごめんね…」と涙したA君のお母さん ~効果的に伝える~

「約束した時間に来たためしがない」「やっておいてねと言ったことをやらない」小4の彼とお母さんとの関係は崩壊寸前でした。私は「どうして彼がそうするとお母さんは思いますか?」と聞くと、「反抗しているんでしょ」とのこと。さぁ、子どもの困り感に思いを馳せる旅にでた私たちは、この彼の行動をどう考えるでしょうか?

さっそく彼と話をしてみると反抗するタイプとも思えません。時間のことを尋ねると、「わからないんだよ!」と頭を抱えるばかり。「俺はダメなやつなんだ」と何度も言う彼。

いろいろ調べてみると、他の能力に比べて「短期記憶」が顕著に低いことがわかりました。つまり、言われたことをちょっと脳に留めておくことがとても難しいのです。これで全ての謎はとけました。彼はダメなやつでは決してなく、反抗しているわけでも全くないのです。お母さんに伝えると「ごめんね…」と涙を流していました。さてこの後、お家にはホワイトボードが登場。必要な時間はホワイトボードや彼のメモ帳に書かれるようになり、ほとんどのことは解決しました。

彼の事例からみなさんが学べることは、我が子に一番効果的に伝わる方法は一体なんなのだろうかと考えることです。下手な鉄砲数撃ちゃ当たる方式で、いくら注意を浴びせてもお互い疲れるだけ。子どものことをよく観察して、「なるほど、このタイミングで声をかけても駄目だわね。」「一度に2つのお願いごとが限界ね!」「声を大きく注意するより、小さい声の方が効果的!」「この時間は魔のゾーンだからそっとしておこーっと」と、我が子にあった方法を探してみましょう。考えた方法がビシッとはまったり、お母さんの在り方で子どもが変化したりすることを目の当たりにすることは本当に感動的なことです。ぜひ体験してみてください!

着替えをしないB君・宿題をしないC君 ~無理しなくてOK!~

朝、とにかく着替えの時間になるとぐずりだす幼稚園生のB君。なんとかかんとか最初はやさしい言葉でやらせようとするけれど、最後は怒ってしまうと悩むお母さん。私の第一の質問は「幼稚園では着替えていますか?」。「ゆっくりみたいですけど、着替えているようです」これがお母さんの答え。

では、もう一人。宿題をやりたがらない2年生のC君。宿題をやりたくないために、学校に行きたくないという程。無理やりやらせようとすると泣いてしまいます。「勉強で困っていますか?」と聞くと、「成績はとてもいいです」とのこと。

さてこの二人のお母さん、こちらも辛くなるほど疲れ果てていました。着替えも宿題も毎日の「やらせなくてはいけないこと」。…んん??本当にやらせなくてはだめ?

私はムリしなくてOKだと思います。
シリーズ①でお伝えしましたが、子どもたちにとって社会は時に戦場です。自分を頑張ってコントロールして適応しようと必死なのです。B君もC君も幼稚園、学校では相当がんばっているはずです。私のアドバイスは、B君はお母さんが着替えを全面的に手伝ってOK。C君へはその問題ができることが確認できたら、あとはお母さんが書いてあげてOK。つまり、たくさんやらなくて大丈夫。これで解決!宿題をお母さんが書いてあげることが不安な場合は、先生に相談するのも良いでしょう。

毎日でなくても、時々「着替えたくない」「宿題やりたくない」ということがあると思います。その場合でも、「あら、ちょっと疲れているのかなぁ」と思いを馳せてあげてください。行事の練習をしているときだったり、ちょっと不得意な分野の学習だったりするかもしれません。

家庭は「安心・安定」の場所

全ての子どもにとって、そして発達に偏りのある子ならなおさら、家庭はこの世の中で最も安心・安定のできる場所です。新学期は新しい環境に頭と心のアンテナがビシバシ立つ子どもたち。お家がアンテナをおろせる場所であることはとても大切なことです。アンテナのおろし方も子どもたちそれぞれ。到底受け入れられないおろし方もあるかもしれません。それでも深呼吸、深呼吸。「疲れているのよね、君も」って少し思うだけで、お母さんの在り方が変わり、それだけで子どもに変化が訪れることがあります。
そして、もう一つ大切なのは「やりすごす」ということ。どんな子どもも日々発達しています。困った行動も永遠には続きません。お母さんが目をつぶると決めたら、あるときパタッとやめたり、放っておいたら自分でやりだしたなんてこともあります!

さて次回は「発達障害かも?」と思ったり、言われたりしたときに、何を考え、どう行動したらよいかをお伝えします。

文/臨床発達心理士 三浦 静
記事/ママトコタイム

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この記事は「ケノコト」に掲載しています。
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