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発達障害ってなぁに?シリーズ その4『うちの子、発達障害?!と思ったら』

2018.05.31(thu)

「発達障害ってなぁに?」の4回目。これまでのシリーズで、「誰もが発達障害!?」「子どもの困った行動に思いを馳せよう」「発達障害を知ることは、人を知る旅に出ること」とお伝えしてきました。でも、頭ではわかっていても、いざ我が子が「発達障害かもしれない…」と思ったり、ましてや先生に「発達障害かもしれないですね」と言われたりした時の心の衝撃は想像に難くありません。さて、この衝撃、どう受け止め、どう行動したらいいのでしょう。

旅のはじまり ~我が子を知りたい!と思う気持ち~

新年度が始まり、一番初めの学校公開。我が子は学校を楽しんでいるかしら?とドキドキしながら学校に向かうと、「わ!全然先生の話を聞いていない!!」「うちの子の机の中や周りだけ汚い!!」。あるいは、ゴールデンウィークを終えたころ「宿題は絶対やりたくない!」と号泣したり、学校へ行き渋ったり。あるいは、夏の暑い盛り、頻繁に「A君がB君を叩きまして…」と先生から連絡が入るようになったり、うちの子は賢い!なんて小さいころには思っていたのに、学校の夏の補習に特別によばれてしまったり…。どこにでもありそうなストーリーですが、ここでの大人の対応がとても大切なのです。

「ありゃ??うちの子大丈夫!?」と思ったら、それは旅のはじまりです。みんなと違うことに腹をたてず、「どうしてそうなっているのかな?」と考えてみてください。学校は100%ユニバーサルデザインではありません。枠組みややり方、先生の教え方が合わないことなんて当たり前。当たり前の視点に立ち、まずは「我が子を知りたい」と思うことがスタートです。

先生は旅の良きパートナー ~先生に口と心を閉ざさないで~

「お子さん、発達障害かもしれません」先生にそれだけ言われても頭が真っ白なのに、つぎに出てくる言葉は我が子のダメ出しばかりだったら、誰だって泣きたくなるか、怒りたくなるかのどちらかに違いありません。実際、私の相談室にくる親御さんのほとんどが、傷つき、怒っています。

お家は刺激が少なく安心地帯なので、困ったことやイライラすることが起きにくい環境です。お家で一緒に住む人たちは感覚的に子どもの特性を理解していて、これまた感覚的にその子に心地よい対応をしている可能性もあります。そのため、先生の言葉に耳を疑いたくなる気持ちも理解できます。
でも、外の世界はそうではありません。先生が我が子に困っているのなら、それは困らせている可能性が高く、かつ、何より子ども自身が困っているに違いありません。なにか、我が子の脳の特性と学校の環境がミスマッチを起こしているのです。

先生の言葉に悲しんで、先生に怒っている場合ではありません!

そこで、先生はかえがたい旅のパートナーになります。教室での様子は先生にしかわかりません。情報を共有して、「もしかしてその行動はこれが原因なのかも?」「あぁ、だからあの時にパニックになったのか!」「こんな方法でやってもらっていいですか?」「お母さん!あの方法、ばっちりでしたよ!!」なんて会話ができるようになったら、そのそばで子どもはイキイキしてくるはずです。
そんないい先生ばかりじゃない?!と思っても、それでもあきらめないで。こちらが我が子を理解しようとしている姿を見せ続けてください。先生には伝わらなくても、子どもはその姿を見ています。

検査と専門家は重要な旅の地図 ~そこに愛はある?~

子どもの特性を把握するのに有益なものの一つに「発達検査・知能検査」があります。WISC、K-ABCは相談室などで行われる検査の主流ですが、検査をすることで、見えていなかったり、あいまいだった子どもの特性が明らかになったりしてくることがあります。情報を目で見て得るのと、聞いて得るのとどちらが得意なのか、記憶の方法にどんな偏りや特性があるのか、抽象的な事柄やあいまいな言葉の理解は今どの程度発達しているのか…まさにそれは旅の地図。子どもを本当に理解しようとするための重要な事柄が見えてきます。

「検査をしたら、障害児というレッテルを貼られる」「IQなんて知りたくない」そんな親御さんの声も聴いたことがあります。ここで重要なのは「検査を読むには『愛』が必要」だということです。これは、私の恩師の言葉です。実際、検査結果は数字の羅列で、無機質なものです。IQだけをみて何かを決めつけることもできます。そこに『愛』がなければ旅の地図には成りえないのです。
ですから、専門家に出会い検査をし、その後の結果面談に愛を感じなければ、そこでがっかりせずに結果をもって他の専門家のもとへ行くという選択肢もあります。それは宝の地図を探すことに似ているかもしれません。

旅を続けていくために

このシリーズを読んでくださった方がこんな感想をくれました。「うちも息子に『発達障害」の文字がでましたー。でもなんだか、ちょっと難しいパズルゲームに挑んでいるような感覚で面白くなってきました」。
この感覚、実は我が子を知る旅を続けていくのにとても大切です。“みんなと違う”という我が子を見て、辛く思ったりイライラしたり。誰でもある気持ちです。でもその中でも、我が子を理解する過程を面白いと思えたら、その旅は順調です!
次回は最終回。「発達障害とは何か?」二次障害に触れながらまとめたいと思います。

文/臨床発達心理士 三浦 静
記事/ママトコタイム

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この記事は「ケノコト」に掲載しています。
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